【医師監修】レチノール(ビタミンA)はシミに効く?押さえておきたい美白効果と使い方

黒沼亜美
監修者 : 黒沼亜美
【プロフィール】

皮膚科医。都内大学病院皮膚科在籍。医学生時代に一児の母となり、現在も常勤として勤務。
自身の子育ての経験を生かし、皮膚科医として赤ちゃんからお年寄りまでのスキンケアのアドバイス、一般皮膚診療を行う。

スキンケア

レチノール(ビタミンA)には、皮膚の細胞の分裂・分化を促進し、新陳代謝(ターンオーバー)を活性化させ、メラニンの排出を促進する効果があります。皮膚科で処方されるトレチノインも、このレチノールの仲間です。シミに対するレチノールの効果と、レチノール含有化粧品を使うときの注意点について解説します。

レチノール(ビタミンA)の美肌効果

レチノール(ビタミンA)には、さまざまな美肌効果があります。

シワ・たるみの改善

レチノールは、シワ改善の有効成分として知られています。シワができる主な原因は、紫外線、や乾燥、加齢などの影響によるものです。レチノールは線維芽細胞を活性化し、コラーゲンやエラスチンの生成を促進することでシワ・たるみを改善します。

肌のターンオーバー促進

レチノールには、肌のターンオーバーを促進する働きがあります。様々な原因で肌のターンオーバーが乱れると、メラニンの排出が遅延し、シミになってしまいます。レチノールは肌のターンオーバーを整え、メラニンを排出してシミ改善へと導きます。

毛穴の改善

レチノールには、肌のハリを保つコラーゲンの生成を促進する作用があります。コラーゲンは加齢とともに生成量が低下します。レチノールの働きでコラーゲンの生成量が増えると、肌のたるみやたるみ毛穴が改善されます。

レチノールとビタミンA誘導体の違い

レチノールはビタミンAをさしますが、美白化粧品に配合されている成分には「ビタミンA誘導体」もあります。

ビタミンA誘導体とは

ビタミンA誘導体とは、ビタミンAの構造の一部を変えたものです。ビタミンA誘導体には「トレチノイン」「酢酸レチノール」「パルミチン酸レチノール」などがあります。ビタミンA誘導体は、構造を変えることで活性や安定性、刺激性が変化するので、効果を高めたり、化粧品に配合しやすくしたりしています。

レチノールとビタミンA誘導体の効果の違い

ビタミンA誘導体のなかでもっとも効果が高いのは、「トレチノイン」です。トレチノインの効果はレチノールの50~100倍ともいわれており、アメリカではシワ・シミ・ニキビの治療薬として一般的に利用されています。一方、日本では、トレチノイン含有のクリームは医療機関でしか処方できません。

シミに対するトレチノインの効果

ビタミンA誘導体の一種であるトレチノインを使った、皮膚科のシミ治療について解説します。

トレチノインとハイドロキノンの併用療法

トレチノインには、強いターンオーバー促進(角質剥離)作用があります。トレチノインは、「ハイドロキノン」との併用で相乗効果が期待できるので、皮膚科ではこの2つがセットで処方されることがあります。ハイドロキノンは「肌の漂白剤」ともいわれ、シミの原因となるメラニンを作り出す細胞「メラノサイト」に働きかけメラニン生成を抑えます。

ハイドロキノンの美白効果については『シミにはハイドロキノン!ハイドロキノン含有美白クリームの選び方と注意点』をご覧ください。

トレチノインとハイドロキノン併用療法の治療経過

トレチノインとハイドロキノンを用いたシミ治療には、約1~3か月かかるといわれます。トレチノインの角質剥離作用は正常な肌への刺激が強いため、トレチノインはシミからはみ出さないように塗るのがポイントです。

効果があるのは表皮のシミだけ

肌は表面に近い側から、表皮、真皮、皮下組織によって構成されています。肌の深い部位にある真皮由来のシミには併用療法の効果はあまり期待できません。トレチノインとハイドロキノンの併用療法の効果があるのは、主に表皮にあるシミです。真皮のシミには、必要に応じてレーザー治療などが選択されます。

レチノール含有化粧品を使うときの注意点

レチノール含有化粧品を使うときは、以下の点に注意しましょう。

紫外線対策を忘れずに

レチノールを使用している肌は、紫外線のダメージを受けやすくなります。レチノール含有化粧品を使用中は、患部に日焼け止めクリームを塗って紫外線対策をしましょう。なお、紫外線によるダメージを考慮して、レチノール含有化粧品は夜のみの使用としているものもあります。

保湿ケアをしっかり行う

レチノールの角質剥離作用により、肌がとても乾燥しやすくなるので、保湿ケアをしっかり行いましょう。保湿能力の高い化粧品を選ぶのもよいでしょう。

強い赤みが出ることもある

レチノールが肌のターンオーバーが促進するため、赤み、かゆみなどが現れることがあります。その際は、徐々に肌に慣らす必要があります。もし赤みが強く出た場合は皮膚科医に相談してください。

妊娠中・授乳中の方の使用は原則NG

レチノールの大量摂取は、胎児の奇形や先天異常を引き起こすという報告があります。ただし、これはレチノールを多く含まれる食べ物やサプリメント等を過剰に摂取した場合で、クリームによって肌から吸収した場合の影響は少ないとされていますが、ビタミンA誘導体全般、妊婦や授乳婦は使用できないとしていることが多いです。

まとめ

レチノールには肌のターンオーバーを促進させ、シミを排出する効果があります。使うときはUVケア保湿ケアなど、使用上の注意点を守って使いましょう。

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