【医師監修】肌がかゆいのは保湿が足りないから?乾燥による肌トラブルをケアしよう

川崎 加織
監修者 : 川崎 加織
【プロフィール】

皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士 日本皮膚科学会専門医 日本抗加齢医学会専門医。
「体の内外から美しくなれるクリニック」をコンセプトに一般皮膚科診療だけでなく、美容医療、頭髪治療なども行っている。またweb雑誌での連載やサプリメント・化粧品の監修などでも、多方面に活躍の場を広げている。

スキンケア

秋冬にかけて肌がかゆくなるという方は、乾燥によりかゆみが起きている可能性があります。肌は体内の水分を保つのに重要な役割をしており、何らかの原因で皮膚のこの機能が低下すると、乾燥→かゆみ→爪でかいてかゆみが悪化、という悪循環に。

乾燥によるかゆみには、乾燥を防いで正しく保湿ケアすることが大切です。ドライスキンになる原因と、かゆみを防ぐ保湿対策について紹介します。

なぜ肌が乾燥するとかゆくなるのか?

なぜ肌の乾燥によりかゆみが現れるのか、そのメカニズムを肌の構造から見ていきましょう。

肌のバリア機能とは

肌の乾燥と密接に関連しているのが、肌の一番表面にある角質層が持つ「肌のバリア機能」です。肌は表面から表皮、真皮、皮下組織の順に並んでおり、角質層は表皮のなかでももっとも外側にある部分です。角質層はわずか0.02mm、ラップほどの厚さしかありませんが、肌の保湿に欠かせない役割を担っています。

角質層は、水分を含んだ角質細胞同士の隙間を細胞間脂質が埋めて、潤いを保持したり水分の蒸発を防いだりする働きがあります。そのため、ウイルスや紫外線などの外敵が肌の内部に侵入するのを防ぎ、肌の健康を保つバリア機能を備えています。

しかし、さまざまな要因でこのバリア機能が低下することで、肌の表面から水分が蒸発して乾燥肌になってしまうのです。

乾燥肌とかゆみの関係

そもそもかゆみは、ヒスタミンなどの物質が知覚神経に働きかけ、脳で「かゆい」と認識されるために起こります。かゆみを引き起こす知覚神経は、通常は表皮と真皮の境界部にありますが、肌が乾燥するとこの知覚神経が皮膚の表面近くまで伸びてきます。

すると、衣類のこすれなどの少し刺激で知覚神経が反応し、かゆみを感じるようになってしまうのです。

肌が乾燥する原因

肌が乾燥してかゆみを引き起こす原因には、以下のようなものが挙げられます。

環境

冬場は乾燥しやすい季節ですが、暖房の風でも室内の空気の乾燥が進みます。さらに、夏場も要注意です。冷房の風や紫外線でも、ダメージを受けて肌は乾燥しやすいため、注意が必要です。

加齢

加齢にともない、水分の蒸発を防ぐ皮脂や細胞間脂質の成分であるセラミドの分泌量が減少し、体内の水分が失われていきます。年齢を重ねるほど、保湿対策はより重要になってくるといえるでしょう。

間違ったスキンケアや生活習慣

洗浄力が高すぎるクレンジングや洗顔料や、タオルを使用したこすり洗い、熱いお風呂なども、必要な皮脂を奪ってしまうため肌が乾燥しやすくなります。また、偏った食生活や睡眠不足など、普段の生活習慣にも肌が乾燥する原因が隠れています。

生活習慣が乱れていると肌のターンオーバーが整わず、古い角質細胞が肌に残ったり逆に未熟な角質細胞が多くなったりして、潤いを保持できなくなるため、生活習慣も注意するようにしましょう。

ただの乾燥肌じゃない!知っておきたい皮膚の病気

乾燥がさらに進行した、皮膚の病気の可能性もあります。気になる場合は、病院で診断してもらうのがおすすめです。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎では、体質的な要因に環境的な要因が重なり、かゆみをともなう湿疹が現れます。アトピー性皮膚炎の肌は、皮膚のバリア機能が低下しているのが特徴で、ハウスダストやストレスなどの環境的因子だけでなく、毎日の食生活やアレルギーが原因となり、かゆみをともなう湿疹を繰り返します。

治療には、ステロイドや免疫抑制薬などの外用薬のほかにも、徹底した保湿が重要です。

皮脂欠乏症皮膚炎

乾燥肌が進行して肌がひび割れや強いかゆみなどの湿疹がある状態は、乾燥性皮膚炎の可能性があります。乾燥性皮膚炎は、脚のすねなど乾燥しやすい部位に現れるのが特徴です。

湿疹ができると肌のターンオーバーが早くなるため、未熟な角質細胞が増えていっそう乾燥するという悪循環につながってしまいます。

乾燥肌のための保湿・かゆみ対策

乾燥肌のための保湿・かゆみ対策について解説します。

入浴時は要注意!

入浴後は皮脂が落ちて乾燥しやすくなります。お風呂につかる場合、お湯の温度は40℃以下が望ましいです。お湯の温度を高くしすぎないように注意してください。

また、マイルドな洗浄力のクレンジングや洗顔料を使う、洗顔料やボディーシャンプーをよく泡立てて優しく洗うなど、乾燥を防いで保湿につながるケアを心がけましょう。

丁寧な保湿ケア

保湿ケアは、化粧水+乳液またはクリームが基本です。化粧水だけでは、水分が蒸発して乾燥してしまいます。化粧水で潤いを与えたあとは、乳液やクリームなどでしっかりフタをすることを忘れないでください。

肌への刺激を避ける

摩擦など肌への刺激は、乾燥によって敏感になっている肌にかゆみを引き起こす原因になります。洗顔料や化粧品は、肌に優しい低刺激なものを使うようにしましょう。また、タオルや衣類は、化繊ではなく綿製品にするなど、肌に負担をかけない素材のものを選ぶのもおすすめです。

例えば、マスクを使うときは紙素材よりも、布素材やフェイスシールドを使った方が、肌への刺激を減らすことができます。

かゆみがあるときはまずは冷やす

かゆみがあるとついつい肌を掻いてしまいますが、肌を掻くと角質が傷つけられ、乾燥とかゆみを起こすという悪循環になります。かゆみがあるときは、まずはタオルでくるんだ保冷剤やシャワーなどで患部を冷やしましょう。

冷やすとかゆみの元となる知覚神経の興奮を抑制することができます。そのあとで、必要に応じてかゆみや炎症を抑える薬を塗るようにしてください。

生活習慣の見直し

食事や睡眠などの生活習慣の見直しも重要です、しっかり睡眠をとると、新陳代謝を促す成長ホルモンの分泌が盛んになり、肌のターンオーバーが整います。睡眠時間の確保はもちろんですが、ソファなどでうたた寝しない、寝る前にスマホなどのブルーライトを浴びない、といったことも心がけてください。

また、肌の健康と代謝をサポートするビタミンB2、ビタミンC、ビタミンAなどを積極的に摂取するのもよいでしょう。

まとめ

乾燥が進んだ肌は、かゆみが起こりやすくなります。保湿ケアのポイントを実践して、乾燥による肌のかゆみを予防・改善しましょう。

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